研究概要 |
著者は,身体的健康のリスク要因としての敵意,抑うつ,および,神経症傾向に共通する要因として,controllabilityを想定していた。そこで,99年度は,まず,このcontrollabilityを測定するための質問項目12項目を作成し,20人ほどの対象者に実施し予備調査を行い,項目表現の修正などを行った。そして,修正後の項目に加え,抑うつについてはBDIおよびCES-D,敵意についてはCookMedley(1954)のHoスケール,および,BAQの敵意尺度,神経症傾向についてはMP IのN尺度を大学生365人の対象者に実施した。その結果,想定されたように抑うつ,神経症,敵意の間には中程度の相関係数が得られているが,ここからcontrollabilityを制御変数としてコントロールするとその相関係数の値がある程度下がることが分かった。ただし,相関の値の低下はそれほど大きいものではなく,controllability以外の共通の要因が存在する可能性も考えられた。現在はこの結果を分析し平成20年度に学会で発表するための準備を行っている。 また,これと平行してとくに敵意を測定するための尺度(とくにHoスケール)の妥当性の検討を行った。300人ほどの対象者に実施した調査結果を分析する限りHoスケールとBAQの敵意尺度の間には中程度の相関があり一定の収束的妥当性が認められたが,一方,神経症傾向との弁別的妥当性が低いという結果が確認された。これは,今後の研究を進めるに当たってなんらか工夫が必要であることを示唆している。なお,この調査結果については千葉大学教育学部研究紀要第56巻にまとめ公表した。
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