状況・文脈からの感情認知を評価する「感情読み取り課題」を開発した。さらに、これと組み合わせてバッテリーとする「感情認知課題」の改良も行った。 「感情読み取り課題」は皮肉表現、もしくは気まずい場面で言いたいことが言えないような発話表現における発話者の感情や意図を、文脈情報を使って読み取る課題である。会話とト書きからなる台本形式の物語文の中でターゲットとなる発話に下線を引き、発話者の感情や意図を選択させる。既に開発した「成人版感情認知課題」との相関を検討したところ言語的能力を統制しても弱い相関が維持されたことから、妥当性に関する根拠が得られたと言える。これらの課題が「感情認知」という共通の特性を測定していると言うことができる。 さらに「成人版感情認知課題」の妥当性をさらに高め、より低年齢の対象者を含めて感情認知能力を評価できるように、課題の改良を行った。具体的には課題の数を減らし、選択肢を表情画による2択式に変更し、条件も一致条件、不一致条件、無感情条件の3つにした。これにより短時間による実施が可能な課題となった。この課題についても妥当性検証のためのデータを収集し、小学生において社会的行動の問題との関連が確認された。また、広汎性発達障害の診断を受けた児童において、小学校中学年、高学年において得点の低さが確認された。さらに不一致課題において字義に頼って感情を判断する傾向が強いことが示された。これらのことから、「感情認知課題」の妥当性の根拠が得られたと言える。
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