研究概要 |
「社会的行動の評価テスト」の開発を行った。ある社会的状況において、登場人物の行動が社会的に適切かどうかを判断する課題で、PDDのある人にとって適切な行動をとるのが難しいと考えられる、以下の2種類の行動を含む場面を設定した。(1)「暗黙の了解」の理解:明確なルールがあるわけではないが、一般的には不適切と考えられる行動。(2)ルールの柔軟な適用:ルールには反するが、よく見かける行動であり、許容されがちな行動。Dewey (1991)の「社会的常識テスト」も参考にしながら、「感情読み取り課題」と同様な台本形式のストーリーを新たに作成した。登場人物の行動について、「適切さ」「多くの人が行うか」「自分が行うか」を評定尺度で評価する。採点はコンセンサススコアリング法で行った。妥当性検証のために「セルフモニタリング尺度(岩淵・水上,2003)」、「適切さへの関心尺度(岩淵,1996)」、「自閉症スペクトラム指数(若林他,2004)」との相関を検討した。その結果自閉症スペクトラム指数との相関が見られ、妥当性の根拠が得られた。また、広汎性発達障害の診断(もしくは疑い)のある大学生に実施し、その回答に一般ではあまり見られない記述が出現しがちであることが明らかになった。これまで、暗黙の了解を評価する課題で、日本の文化にあったものは開発されていなかったが、我が国の青年における社会的判断の逸脱の程度を量的に評価することが可能になった。
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