研究概要 |
本研究では感情認知能力と社会的適切さの判断を多面的に評価する「社会的情報処理能力検査バッテリーを開発し、信頼性、妥当性を検証し、標準化を行った上で、臨床的妥当性の検証を行うことを目的としている。 平成21年度は「社会的情報処理能力検査バッテリー」の信頼性および妥当性の検証を進めた。具体的には、臨床群におけるデータを収集することによって、臨床的妥当性を検証した。さらに、自由記述の評価が安定していないとの問題点が生じてきたことから、自由記述の評定者間信頼性を高めるためのマニュアル作成に取り組んだ。 「社会的行動の評価課題」の妥当性検証 (1)「社会的行動の評価課題(社会的適切さ判断の名称変更)」のさらなる妥当性を検証するために自閉症スペクトラム指数(若林ら,2004)との相関を検討した。その結果、自由記述における逸脱得点とAQとの間に相関が認められ、妥当性の根拠が得られた。 (2)PDDおよびその疑いのある大学生に課題を実施し、その得点が非臨床群の得点と比較し、異なるかどうかを検討した。診断のある学生において、自由記述の逸脱得点において健常群の平均よりも2SD以上高い値が示された。 以上の結果から、本課題においてはとりわけ、自由記述の逸脱得点が自閉症スペクトラムの指標として有効である可能性が示唆された。 自由記述の評価マニュアルの作成 評定者間信頼性を高めるためにマニュアルの改訂を行い、信頼性の改善が見られるかどうかを検討するための準備を進めた。
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