研究課題
本研究の目的は、臨床家が臨床心理面接という「対話の場」を設計する際に、どのような技を適用しているのかを、明らかにすることであった。熟練した臨床家の技は、クライエントとの間のどのようなコミュニケーション・パターン(対話の行い方の様式)として立ち現われてくるのか、ということについて、初心の臨床家との比較・検討を行ってきた。本年は研究の最終年度になるので、最終成果報告に向けて、これまでに得てきた知見を集約的に体系化した。本研究が明らかにしたのは、主に以下の2点である(詳細は研究発表を参照)。1. セラピストの相互学習を推進、活性化させるモデルを設計し、その効果を確認した。これは、面接という対話の実践と研究の往還の中で、学習者とともに、学習者が実用できる知識を見出し、共有することを可能にするものである。知識発見のための手続きには、臨床心理学および情報学(情報科学・認知科学)がそれぞれ志向する対話分析の手法の併用が有効となることが示唆された。2. これまでの対話分析から、心理臨床面接におけるセラピストとクライエントのあいだの様々なレベルでの齟齬の生起について、この齟齬が面接のなかで解消されることと、面接が成功することが相関している可能性を、発話と身振りの量的分析と質的分析から示唆した。ここで齟齬とは、たとえば、セラピストはクライエントを勇気づけたつもりでも(介入意図)、クライエントはそう受け止めていないといった、すれ違いをさす。以上より、現時点での達成点と課題点をふまえ、本プロジェクト終了後の今後の継続的体制について展望した。年度末には、報告書を作成し、本研究を完結した。
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電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界, 社団法人電子情報通信学会 J92-A(11)
ページ: 725-733