研究概要 |
教師バーンアウトについて,発生過程を系統的因果分析及び統計的な実態調査と臨床心理学の個別的な事例研究とを有機的に結びつけることで捉え直し,教師バーンアウトの規定要因の連関構造を明らかにすることが研究の第一の目的である。そのために,新井(1999)が用いた質問項目に感情労働という観点を加えた質問紙調査を,教員養成系大学院に在学する現職教員(120名)を対象に実施した。また昨年度の引き続き,バーンアウトを経験した教師(8名)を対象に半構造化面接を実施し,分析のためのデータの蓄積を図った。 以上の分析結果に基づき,どのような側面への働きかけによって教師援助が効果的なものになるかを明らかにし,職場もしくは学校外のネットワークにおけるサポートシステムの確立を可能にするプログラムを開発することが研究の第二の目的である。そのために,近畿地方の小・中・高等学校および教育委員会主催の研修会などにおいて,職場の同僚性・協働性を高める校内研修やメンタルヘルス研修(認知療法やフォーカシング),管理職に対する学校危機管理(マネジメント)研修を実施し,その効果に関するデータの蓄積と分析を行った。また,平成19年度より神戸市において毎月1回,「悩める教師のためのセルフ・ヘルプ・グループ」を開催し,各回の話し合いの内容や流れ,参加者の相互交流について概観するとともに,継続的な参加者のなかで同意を得られた者に対してグループ体験に関する半構造化面接を行い,それらがバーンアウト予防にどのような効果をもたらしているかについて検討を加えた。特に,そこで語られた内容やグループの力動について分析し、その結果を日本カウンセリング学会第42回大会において発表した。
|