研究概要 |
本研究は,地域社会における子どもの心理臨床的問題の発生には,地域社会のさまざまな構造に由来する脆弱性が反映されているとの仮説に基づき,A「地域の構造」,B「地域親子関係構造」,C「地域自己構造」の3つの解析から臨床心理学的地域支援の基盤となるモデルを得ようとするものである。平成20年度においては,A〜Cの3つの研究を次のように進めた。 A.「地域物語構造の解析」 平成19年度に続き『“地域"には人々の語りを独自の民俗的「文脈」によって縛りコントロールしている物語構造があり,それが目に見えない形で地域-学校-家庭を,良くも悪くも繋ぐものとなって機能している』という基本仮説の実証に関運するデータを,スクールカウンセリングにおける相談事例,精神科における症例を中心にエピソード収集した。また都市部における状況との比較のため新たなデータ収集を行った。 B.「地域親子関係構造の解析」 平成19年度には親子関係について,保護者(特に母親)の身体的抵抗感をとらえるのに有効な尺度項目を試作した。その結果,親子のおかれた状況を反映した問題を捉えるためにはより多角的な視点が必要とされることが明らかになったため,平成20年度は再び事例エピソードの取集に努めた。 C.「地域自己構造の解析」 「脆弱性-不屈性」尺度を試作するためのベースとなる子ども及び親子関係の“気になる様子"について平成19年度における予備調査をもとに項目選定を実施した。この際,研究の性質上,データ収集地域の特性をどのような形でデータ化するか,が新たな研究課題として浮かび上がり,平成20年度はこの点に留意したデータ収集の方向性を再検討しながら,資料の追加収集を実施した。「声」の解析については文献研究を進めるとともに,実際の事例について資料収集及び分析を重ね課題の検討を行った。
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