研究概要 |
研究の目的:本研究は,がん・緩和医療現場の臨床心理士(以下,心理士)を臨床心理士養成大学院(以下,大学院)の教員が臨床実践及び研究において連携支援(以下,病学連携)する体制を構築することを目的とする。 研究実績:(1)第三次調査前年度に引き続き,継続的に病学連携している関東地区,関西地区,中国四国地区,九州地区の「パリアティブケア研究会」及びその合同研究会の計5団体の病学連携の現状と今後の課題に関し事例研究を行った。研究初年度に開設したメーリングリスト(メンバー295名,通算650通)で連携情報を公開し,各団体の事務局担当者が一堂に会した全国規模のシンポジウムを2回開催した。その結果,5団体の病学連携はこの3年間で順者に展開し,心理士支援の効果を発揮したが,心理士に比べ大学院教員の参加者数が依然少なく,研究会の定期的開催のために新規参入教員のリクルートが課題とされた。(2)第四次調査前年度までの調査を基に,心理士の教育研修には,職種固有と多職種協働等の2軸以上,院内(例 ケースカンファ),地域(例 地域密着事例検討会),全国(例 学会)等の3層以上の研修機会が必要であるとし,「多軸多層的研修モデル」を提唱した。本年度は,多職種協働に加え,がん患者団体との協働の軸の創出をめざした全国規模のシンポジウムを行った。また,年度末に,心理士約300名に,本年度の1年間の研修経験に関するWEB調査を実施し,現在集計中であるが,多軸多層的な研修を受けた心理士の割合は少なく,とくに多職種協働軸の全国規模の医学会への参加率が低かった。心理士の多くは非常勤職で出張旅費が保障されていない等の事情が考えられる。研修機会の促進及び阻害要因の解明,多軸多層的研修の普及方法の開発,さらには当初予定していた大学院カリキュラムの検討は今後の課題として残された。
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