今年度の研究では、平成18年度に調査を行った青年期の高機能広汎性発達障害児者(以下、HFPDD)10名(18歳〜24歳)のうち、7名について継続的な調査が実施できた。また、新規に5名の青年期HFPDDの調査を実施した。 継続的な調査結果として、平成18年度と20年度の調査結果を比較すると次の4点が明らかになった。第一に、青年期においても継続的な支援を行うことで、WAIS-IIIや○△□物語法の結果から判断しても、「類似」「理解」「絵画配列」といった社会的な場面における状況判断の柔軟性が伸びている。第二に、男女差(女性は2名)をWAIS-IIIで比較すると、男性では動作性全般が伸びるのに対して、女性では言語性の伸びが顕著になる特徴がある。第三に、WAIS-IIIでの言語性と動作性との差異(15以上)を「不器用さ」の指標として比較すると、不器用さが高い群では「単語」「算数」「行列推理」が大きく低下しており、判断の不確実性が高いことからも、不器用さと自信の低下とが相関することが示唆される。第四に、TATの結果から見ても、日常的な社会生活での体験では一見安定した行動・認知パターンが可能であるが、多くが大学生活を経験する発達段階になっても、新奇な状況判断では柔軟性を欠くことも明確である。 以上のことから総合的に判断して、青年期HFPDDの自己意識の特徴として、将来的な職業意識へのオリエンテーションを早期から始めることと、青年期の自我同一性の適切なモデルとなる仲間集団での活動を通して、自己評価の安定を計ることが重要であることが理解できる。
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