目的 児童養護施設の入所児童の示すさまざま問題行動が見られることが注目されている。その多くは、現在のところ発達障害または反応愛着障害として理解されている。しかし、実際には施設内でさまざまな暴力が存在し、入所児童の安心・安全が保障されていない可能性がある。その可能性について検討し、さらに入所児童の安心・安全を保障するシステムについて検討を行った。 方法 複数の児童養護施設での日常生活の観察、および職員と入所児童への定期的聞き取り調査を行った。 結果 施設には「2レベル3種の暴力(含性暴力)」があることがわかった。2レベルとは潜在的暴力と顕在的暴力であり、3種の暴力とは(1)職員から入所児童への暴力、(2)子ども間暴力、(3)子どもから職員への暴力、の3つである。そこでは、被害者が後に加害者になるという暴力の連鎖がみられることがわかった。 考察 入所児童の示す問題行動は、暴力等のその子が現在置かれている状況への反応である可能性がある。控え目に見ても、発達障害による問題行動や過去の虐待や過酷な養育環境への反応だけでなく、現在の状況への反応が大いに含まれている可能性がある。これらの施設内暴力(含性暴力)は相互に関連しており、いずれか1つの暴力だけを取り扱うのでは他の暴力が激化することがあるので注意を要する。また、被害者が後に加害者になるという暴力の連鎖から、従来の個別対応のみでは解決困難であり、「個と集団」に注目したアプローチが必要であると考えられる。
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