本研究は自分描画法研究(SPM)の第2段階にあたり、質的分析に照準をあてる。研究目的は(1)思春期・青年期の"今の思い"を本法で把捉可能かの検討、(2)自分描画時の対象者の描画行動をビデオで撮影し描画行動の分析を行い、実施後に行うPDI結果と照合する、(3)自分描画法実施時の教示内容の検討、(4)性格傾向との関連をみるため、バウムテストとK-SCT結果から分析考察する、(5)質的分析を補完するものとして、思いに関する独自の質問用紙への応答内容について統計を用いた量的分析を行う(SPSS15.0使用)、以上5点にある。2つの予備研究後、大学生男女各20名(総計41名)に対して、バウムテスト→思いに関する質問用紙への記入(前半)→自分描画法実施→自分描画法に関する質問用紙への記入→思いに関する独自の質問用紙への記入(後半)→PDI[自分描画の説明→イメージについて→自分描画に「自分の思い」がどの程度現れているかの確認→描画行為に関する実感の度合い→他に気づいたこと→K-SCTを実施。所要時間は約1時間程度であった。 20歳の女性が描いた自分描画、「ドライブに出かけたら、迎えを待っている知らない人を見つけた。もうすぐ迎えが来るんだろうなと思ってその人の前を車で走り去った」という自分描画に隠れているものは「うきうきしたもの」。PDIでは「一瞬見ただけなのに、絶対にこの人は迎えを待っていると思う」と述べた。全員が自分描画に何かしらの思いを浮き上がらせた。描画中・後の対話は思いの確認定着のために必要であり、教示内容は小山(2008)で詳細に述べた。KSCTは個性的な自分描画理解を深めるためには有効だとわかった。性差の観点から有意な差異を認めたのは「物語の内容が実際に体験した内容か」の項目のみだった(0.048<0.05)。自分描画法は性差の影響をほとんど受けない。
|