筆者は自分描画法(Self-Portrait Method;以下SPMと略す)研究において、子どもから大人へと成長するに従って落書きに変化が生じる点に着目した。本研究において落書きは人の思いを映し出していると仮定し、SPMを落書き行為とみなした。また筆者は思いの深まりの経過を説明する方法として、「思いの理論("OMOI"approach to psychotherapy);小山(2002)」を用いた。本研究結果、落書きには「今の自分のありよう」「今、自分が気になっていること」「心理的背景」「心の中に隠れているもの」の4つの要素が含まれ、これらが関わり合って人の思いが構成されることがわかった。2007年度は大学生40名に対してSPMを実施した。その結果、SPMは性差の影響をほとんど受けないこと、そしてSPMを用いると個人の思いを浮かび上がらせることが可能であることを確認した。2008年度は北海道立高校2校の協力を得て、総計219名にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張緩和の効果が認められた。また「思い」という言葉から想起する色彩は男女とも「透明」と答える人が最も多く、そのあと赤、白、橙と続き、最後に紫と黒をあげる人が多かった。2009年度は中学生183名を対象にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張が緩和されることがわかった。思春期にある人にはSPMは有効に働くことがわかった。「思い」という言葉に最も近い色を尋ねたところ、透明(22%)→白(18%)→赤(17%)→燈(14%)で71%を占めた。いずれも思春期の人が好む色だった。2010年度には、B高校からの依頼で、高校1年生と2年生合わせて総計320名に対してSPMを実施した。本研究目的は、SPMがスクリーニングテストとして活用できるかどうかを見定めることにあった。その結果、SPMはいくつかの留意点を踏まえた上で実施すると、スクリーニングテストとしての効果が見込まれることがわかった。以上、4年間にわたるSPM研究の結果、SPMは心理療法として活用できる可能性が充分にあることがわかった。
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