研究概要 |
学校関係者のメンタルヘルスリテラシーを高める試みは,児童、生徒の心理的問題への早期気づきとメンタルヘルスの保持、増進および適切な支援を行う上で有用だと思われる。しかしながらこれまでそうしたことについて一般化できる情報は乏しく,他専門職との比較検討,さらには諸外国との比較可能性をもつ大規模調査は行われてこなかった。 そこで本研究では,学校関係者のメンタルヘルスリテラシーの実態を明らかにすることを目的とし,今年度は次の2つの方向性で研究をすすめた。第一に,学校関係者に「精神保健の知識と理解に関する調査」(AUSTRARIA-JAPAN SURVEY OF MENTAL HEALTH LITERACY)を実施し,その実態を明らかにした。具体的には,調査票を学校関係者用に改変し,学校関係者(学会員,高等学校教員,大学生)を対象に調査を実施した(計385名)。また希望者には,結果をフィードバックした。調査の結果,(1)事例の認識は例えば学会員においてはうつ病事例71.4%,統合失調症事例74.2%であり,従来われわれが行ってきた一般住民,専門家の結果と比較して極めて高かった,(2)事例への態度は,個人的な考えと一般的な考えとの間にズレがみられた,ことなどが明らかになった。第二に,本研究対象の比較対照群の解析をすすめつつある。対照群は,同様の調査票を用いてこれまで厚生労働省科学研究費(2003年度〜2006年度)によって進めてきた研究(「精神保健の知識と理解に関する日豪比較共同研究」:主任研究 者中根允文)の対象者(一般住民2000名,精神科医157名,一般医88名,作業療法士334名,精神保健福祉士365名,一般看護師257名,精神科看護師172名)である。その結果,事例についての適切な認識が進むことは,事例への態度に変容をもたらす可能性があることなどが明らかになった。
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