研究概要 |
人間を含む多くの動物種にとって,外界にある対象の数量についての情報処理は,環境適応に重要な役割を果たしている。本研究では,ヒトとは遠縁種にあたるハトを用いたカウンティング行動の研究として,白色ドットに反応するとそのドットの色が赤に変化し(カウンティング反応),すべてのドットの色が赤に変化したところでドットの数(1,3,5,8個)に対応する比較刺激を選択するという数量弁別課題を開発した。この課題のカウンティング反応は,まだ数えていない対象(白いドット)からすでに数えた対象(赤いドット)を選りわけという機能をもち,数と対象との1対1対応に必須の機能である。この課題をハトが学習した後,訓練には用いなかった2,4,6,7個のドットを含む刺激を呈示してテストしたところ,ハトは数の系列に矛盾しない転移を示した。しかし,このような数量弁別において,ハトはカウンティング反応回数の他に,1)カウンティングに要した時間,2)選択反応時点に存在する赤いドットの数や赤領域の面積を,選択反応の手掛かりとして使っていることが明らかになった。しかしカウンティング反応回数だけを手がかりにする訓練を行った結果,1aや2)の手がかりを使わないカウンティング行動が形成されることが確認できた。
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