研究概要 |
前年度までに、ハートが白色ドットに反応するとそのドットが赤に変化し(カウンティング反応)、すべてのドットの色が赤に変化したところでドットの数(1,3,5,8個)に対応する比較刺激を選択するという数量弁別課題を開発した。20年度は、ハトが用いた可能性がある非数量的手がかりとして1)選択時点の赤ドットの数に対応する赤領域の面積や明るさ、2)すべてのドットを赤にするために要した時間、3)白ドットの数に対応する白領域の面積や明るさについて検討した。その結果1)や2)よりカウンティング反応数の方が手がかりとしては優位だった。また、訓練によってハトはこれらの手がかりをほぼ完全に無視することを学習した。一方、カウンティング反応を許さない場面でテストすると数量弁別が崩壊したことから、3)よりカウンティング反応数が選択反応を制御していることが明らかになった。これらの成果は英語論文としてまとめ国際学術誌に投稿した。また、新しいハト4羽を用いて数量弁別に関与する記憶過程についても検討を始めた。動物における短期記憶課題では選択刺激への定位反応を介在としない場面設定が必須なため、比較刺激4種を毎試行ランダムな位置に呈示する条件下で、実験経験がない新しい4羽のハトを訓練した。選択反応が生じるまでドット刺激が呈示されている同時弁別場面でまず訓練したが、予想以上に弁別学習は困難でほぼ120セッションで弁別完成基準に達した。今後は、0秒遅延を導入して再訓練した後に記憶テストを行うことになるが、本年度の予備的研究によって比較刺激の呈示位置を毎試行ランダムに変化する場面でもハトは学習可能なことが確認された。
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