研究概要 |
前年度までに、ハトを対象とするカウンティング行動課題を開発し、ハトのような動物でも1から8までの計数が可能なことが確認された。本年度は、ドットをカウントした後に遅延時間を挿入し、遅延時間が経過した後にドット数(1,3,5,8)に対応する比較刺激(赤などの色)を選択する短期記憶課題を用いて、数量の短期的保持過程について検討した。数量に対応する比較刺激を遅延中に保持している予期的符号化(例えば「赤に行け」)が起きているなら、誤反応はどの比較刺激にも均一に生じうと考えられたが、近接した数に対応する比較刺激への誤反応がそれ以外の比較刺激への誤反応より多かった(例えばドット数が8の場合、1や3より5に対応する比較刺激に対して多くの誤反応が生じた)。また、誤反応には過小評価の傾向がみとめられた(ドット数が5の場合は、8より3に対応する比較刺激への反応が多かった)。これらの結果は、時間経過とともに記憶にあるドット数が減少したことを示唆し、数量のアキュムレーション・モデルを支持した。なお、九官鳥についても同様のカウンティング課題を用いてハトとの種間比較を計画したが、正反応に対する報酬による強化法などに問題が生じ、実験を完成するまでには至らなかった。
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