研究概要 |
色知覚の文脈処理の重要性を示唆する代表的な知覚現象として色対比現象が挙げられる。色対比とは、ある色刺激(テスト刺激)の見えが他の色刺激(遠隔刺激)によって変化する錯視である。古典的な色対比の例では、テスト刺激と遠隔刺激が隣接している場合が多いが、左右視野を跨るような遠く離れた2色間でも色対比が生じることが知られている(Wachtler, et. al., 2002)。本研究の目的は、機能的共鳴画像化法(fMRI)による脳機能イメージング法を用いて、色覚の文脈処理の脳過程に関する下記の3つの疑問に解答することである。 Q1)色覚でも、低次視覚野において文脈処理が行われているのか? Q2)色覚の文脈処理に重要な役割を果たす高次視覚野はどこなのか? Q3)色覚の文脈処理に関与する低次野と高次野は機能的にどのように関係しているのか? 初年度では、研究目的であげた2つの疑問(Q1とQ2)に答えるべく、色対比効果に関する心理実験およびfMRI実験を行った。心理実験で色対比効果の距離(テスト-遠隔刺激間)依存性を測定したのち、fMRI実験によって、同様の刺激事態における被験者の脳活動を測定した。予備的な解析の結果、1)初期視覚野に色対比機構が備わっていること、けれども、2)その機構は視野の比較的狭い範囲の色比較に限定されること、がわかった。したがって、上記の遠隔効果はより高次の視覚野が担っていると予想される。最終的な結論を得るためには、この予備的結果を基に、最終年度でさらに被験者および解析対象の視覚野を増やす必要がある。
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