研究概要 |
昨年度、一昨年度には、アクション・スリップ誘導法を確立し、アクション・スリップの基礎データを収集した。具体的には、左右、上下、前後といった方向や,「2回たたく」というような回数といった情報をアクションの構成要素として計画的に組み込み、それらがアクション同士で入れ替わってもアクションが成立する対を作成した。この材料を用いて2つのアクションを模倣するという実験を実施したところ、アクション順序の入れ替わり,ならびに要素間の入れ替わり(スプーナリズム)などを含むアクションのエラーが得られることが確認された。また、言語性作動記憶の働きを阻害する構音抑制という二次課題のもとでは、このエラーが劇的に増加することも示した。さらに、系列順序コントロールがこうしたアクション課題の遂行に担う役割を検討するために、2つのブクションの遂行順序が予想可能か不可能かという2つの状況でのアクション・スリップの生起率を比較し、また、これら2つの状況で、構音抑制を用いて言語性作動記憶の働きを妨害したときの効果がどのように影響を受けるのかを検討した。その結果、アクションの順序が予測不可能で、アクションの順序競合が存在する事態において、そうでない場合にくらべて多くのアクション・スプーナリズムが観察され、また、構音抑制による妨害効果も大きいということが発見された。本研究の最終年度にあたる本年度は、これらのデータを、系列コントロールと認知セットバインディングという理論的枠組みに位置づけ、Experimental Psychology Society総会および国際シンポジウムにおいて報告するとともに、この分野の研究者と情報を交換しながら、アクション・コントロールにおける言語性作動記憶の役割をモデル化した。
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