研究課題/領域番号 |
19530659
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
富原 一哉 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (00272146)
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研究分担者 |
小川 園子 筑波大学, 人間総合科学研究科, 教授 (50396610)
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キーワード | 社会行動 / 学習・記憶 / エストロゲン / マウス / 母性行動 / diethylstilbestrol / 妊娠・出産・養育の効果 / 行動神経内分泌 |
研究概要 |
妊娠・出産、授乳期におけるエストロゲン等の劇的なホルモン変化は、周生仔期と同様に雌親の中枢神経系に長期的・構造的変化を引き起こし、学習の向上や情動の安定をもたらすと報告されている。一方、多くの内分泌かく乱物質(いわゆる環境ホルモン)は、エストロゲン様作用を通じて神経内分泌機能に阻害的効果をもたらす。したがって、妊娠・養育期間中の内分泌かく乱物質への曝露は、長期的・多面的に雌親の行動に対して影響を及ぼす可能性がある。我々は2007年度までに、妊娠後期に合成エストロゲンであるDiethylstilbestrol (DES)を経口投与された雌親マウスは、溶媒投与の雌親よりも養育行動が低下し、情動場面での活動性が増加することを見いだした。さらに2008年度は、C57BL/6j系マウスを被験体とし、妊娠・授乳期曝露が社会行動や学習・記憶に及ぼす影響を検討した。妊娠11〜17日および出産後2〜6日に、実験群の雌親に1匹あたりDES0.1μg/30μl/dayを、溶媒群には同量の溶媒(Corn oil)を経口投与した。また、統制群として処女マウスにも同様の処置を行った。続いて出産1ヶ月後から、社会認知記憶、におい選好、性行動の3つのテスト場面で雌親の社会行動の観察を行った。学習・記憶の検討としては、T字迷路を用いた遅延非見本合わせ課題を行った。その結果、処女雌においてのみ、DES曝露は社会認知テストにおける社会的慣れを促進し、また、遅延非見本合わせ課題における短い遅延時間での正答率を低下させた。出産雌でDES曝露の効果が明確ではなかったのは、妊娠・出産経験がエストロゲンに対する反応性を変化させるためかもしれない。そこで次年度は、エストロゲンレベルを統制してDES曝露が雌親の行動へ与える影響を検討する予定である。
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