体性感覚情報処理系における能動的注意の作用点を同定するために、注意レベルを反映すると思われる心理物理計量(反応時間)と体性感覚系における皮質活動を同時に計測し、それぞれの試行における皮質活動強度と反応時間の量的関係を描出する。報告者は自らの先行研究において、視覚的注意を正面に向けたときに手を視線方向の左15度〜右45度の位置においたときの体性感覚誘発皮質活動を160チャンネル脳磁計により計測し、2次体性感覚皮質活動強度が手の位置により相違すること、及び2次皮質が注意により有意な修飾を受けその活動強度が増強することを観察している。本研究においては、注意レベルをコントロールするために異なる手の位置において、脳波計測と心理物理計測を行う。それぞれの手の位置における1次及び2次体性感覚皮質の活動潜時の異なる成分の活動強度と指先に与えられる電流刺激に対する反応時間の相関強度を解析し、相関の強い皮質活動成分を特定することにより注意の皮質作用点を検討する。 19年度は、56チャンネル脳波計システムの構築し、心理物理及び脳波計測用のソフトウェアを作成した。試行的な脳波計測を開始したが、現在外部ノイズの低減のために電磁シールドを含めた計測系を調整している。また、得られた脳波データの解析方法(電流密度分布推定、皮質活動成分の分離)検討している。20年度前半には、統計学的解析を実施できるだけの計測データを蓄積し、年度後半にそれらデータの解析を行う予定である。
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