刺激対象に注意を向けることにより、その刺激により誘発される皮質活動が増強されることは、報告者を含め多くの研究者により報告されている。また、注意により情報処理が促進され、反応時間などの心理物理量が変化するこも知られている。皮質活動と注意および心理物理量と注意のそれぞれれの関係に関わる多くの知見はあるが、皮質活動と心理物理量の関係を解析するのが本研究の目的である。具体的には、指先への電流刺激に対する反応時間の伸縮に相関する皮質活動部位を体性感覚処理系で同定し、注意の感覚情報処理に対する皮質作用点を検討した。なお、全被験者から実験に参加することへの同意書が提出され、研究の実施に関して岡山県立大学倫理委員会の是認を得て実施された。5名の被験者において、56チャンネル脳波計による体性感覚誘発電位と刺激に対する反応時間を同時に計測し、反応時間に有意な相関を示す誘発電位を計測する電極とその活動潜時を解析した。また、頭蓋上電位と脳内活動部位を対応させるために、RD Pascual-Marquiらによって提案されたsLORETAを用い、脳内電流密度の推定した。SLORETAにより刺激後20ms、40msおよび60msに刺激指の体側半球の1時体性感覚皮質の活動成分及び100ms周辺に始まる2次体性感覚皮質の活動を観察できた。解析にはノイズの少ない4名の被験者の計測脳波が用いられた。刺激後80msまでの皮質活動には反応時間の伸縮に有意な相関を示すものはほとんど見られず、80~100ms以後に有意な相関を示す活動が見られ、本研究での電流密度解析あるいは報告者が従来脳磁計により計測した2次体性感覚皮質活動が関与するものと思われるが、より多くのデータ解析を蓄積することによる精査が必要がある。本研究により、1次体性感覚皮質に比し、2次皮質がより情報処理促進に関係することが示唆された。
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