1)これまでの多選択肢課題への反応傾向を分析した研究結果のレビューから、横一行に配列されたすべての選択肢が未知である場合には、両端を避けて中心領域に選択が集まる中心化傾向が得られることが予測された。すべてが未知と考えられる複数の国旗の選択肢群から質問対象となった国旗を選択する実験課題において、第1回目には中心化傾向が、第2回目には中心以外の領域への選択傾向が観察された。逆に、両端に既知の国旗選択肢をおくと、第1回目には中心以外の領域、第2回目には中心領域への選択傾向が観察された。 2)1)と同様な課題を用い、その眼球運動を観察することで、視線による制御が選択にどのような効果を及ぼすのかを4人の実験対象者で検討し、3人において、すべてが未知選択肢からなる試行では、第1回目には中心領域への、第2回目には中心以外の領域への選択が見られた。一方、既知選択肢が両端におかれた試行では第1回目には中心領域を避けたが、第2回目には中心化傾向は観察されなかった。未知選択肢の割合が大きい時に繰り返し回数が少ないほど視線の変化に規則性が少なくなる傾向が見られたが、系統だった変化は観察されなかった。最終的な選択領域への視線の総滞在時間は選択肢間ではより長いものが多かった。 3)マンガの読書行動を眼球運動から分析し、視線の制御と周辺視野情報の持つ効果を検討するため、視線連動型の実験装置を利用した移動窓法によって周辺視野を制限しながらマンガを読ませ、その際の視線移動や内容理解を検討する一連の実験をおこなった。読み速度・視線移動への影響の有無を分ける臨界範囲を超える視野制限の効果を検討した結果、制限量に応じた読み時間の増加とフキダシ以外の要素への全般的な停留時間の増加が観察された。ここから、一定範囲以上の視野制限では制限量に比例した視線移動の変化が生じることが確認された。
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