研究概要 |
本年度は視覚刺激を用いた実験と聴覚刺激呈示装置の1部の設置を行った. 研究代表者は運動からの構造復元刺激を用いた心理物理学実験により,主観的面の知覚を生起するドットの背景に対する輝度が運動速度に比例して変化する場合,面の形状を決定するとともに,それら2つの面により構築される空間構造が高い確率で一意に決定されることから,空間構造理解にドットの背景に対するコントラストが特徴量として用いられていることを示した(Yoshizawa ら,2006).この結果は背景に対して目立ちやすい対象は観察者により近いという知覚をもたらすことを示唆している.そこで,対象刺激の空間構造を理解するとき,その周辺にある刺激が影響を及ぼすかを観察することにより,空間構造理解の文脈依存性について調べた.対象刺激単独の場合は奥行き構造を決める面の回転方向が曖昧であるが,周辺に特定方向に回転する知覚が得られる刺激を配置した場合,対象刺激は文脈に従う回転方向に知覚されることが明らかとなった(Yoshizawa ら,2007).このことは,空間構造の理解が単に刺激自体による感覚情報の寄与だけでなく,先見知識などに基づいた高次の処理機構からの情報も利用することにより行われていることを示唆している.さらに,異なる様相間(例えば,視覚と聴覚間)における相互作用の可能性についても示唆している. 一方,申請備品である聴覚刺激呈示装置の設置はその大半を終了した.残りの部分の設置と刺激パラメータの決定は次年度行う.
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