研究概要 |
本年度は視覚刺激を用いた実験と聴覚刺激を用いた実験を行った. 視覚実験では視空間における奥行構造を決定するために重要な視覚情報として両眼視差情報がどのように形成されているかを心理物理学的に明らかにした(Yoshizawaら,2008).この研究では,輝度情報だけが両眼視差の信号として寄与していると報告されている先行知見は両眼奥行情報の理解としては不十分であり,メカニズムを詳細に明らかにすることを示唆した. 一方,昨年度設置した聴覚刺激装置(申請備品)を用いて聴覚刺激の作成を行い,聴覚刺激を用いた心理物理学実験を行った.先行研究(Yoshizawaら,2007)において研究代表者は運動からの構造復元刺激を用いた心理物理学実験によって,多義図形の空間構造は目立ちやすい対象を観察者がより近い位置に存在していると知覚していることを示した.この多義性が,聴覚情報のみで解決され,視覚情報では曖昧なままであるとき,我々がどのように空間構造理解を行っているのかを聴覚実験において明らかにした.具体的には,音源が移動する聴覚刺激を用いて音源の物理的空間位置と知覚の違いを心理物理学的に調べた.刺激条件としては単に空間内を純音が連続的に移動するのではなく,断続音や音階の連続的な変化を伴う移動をさせることにより,聴覚刺激による空間定位のメカニズムの解明を行う. なお,この実験は現在も現在進行中であり,次年度前半に終了予定である。
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