本年度の研究では、まず、グラスマーブル覆い隠し行動の系統差について検討した。平成19・20年度に用いた近交系マウス(C57BL/6J系統)に加えて、DBA/2J、C3H、およびBALBc系統およびクローズドコロニーのICR系統を用いて比較した。その結果、通常の飼育で用いている床材(TEK-FRESH)を使った実験においては、C57BL/6JとICR系統のマウスがDBA/2J、BALBcおよびC3H系統のマウスよりも多くのグラスマーブルを覆い隠した。この結果は、グラスマーブル覆い隠し行動に系統差があることを示している。グラスマーブル覆い隠し行動を評価系とした抗不安薬・抗鬱薬などのスクリーニングでは、グラスマーブル覆い隠し行動の発現しやすいC57BL/6J・ICR系統のマウスを利用することでスクリーニングをより効率的なものに出来ると期待される。次に、グラスマーブル覆い隠し行動における、マウス系統と用いる床材の相互作用について検討した。用いた床材は平成19年度同様、TEK-FRESH、ALPHA-dri、GreenTru、Sawn wood(soft chip)、Paper-CleanおよびCelludriの6種類の市販品を用いた。全ての床材において、C57BL/6J系統とICR系統のマウスのグラスマーブル覆い隠し行動が他の系統のマウスの行動よりも高い傾向が見られた。特に密度の高い床材(GreenTruやALPHA-dri)を用いた実験では、ICRのグラスマーブル覆い隠し数が顕著であった。これは、ICR系統が他のマウス系統よりも体格で勝ること、および自発活動性が高い傾向にあることも関与していると考えられる。このように、本年度の研究から、グラスマーブル覆い隠し行動を用いた抗不安薬・抗鬱薬評価系としては、床材として密度の中等度であるTEK-FRESHを用い、マウスはC57BL/6J系統あるいはICR系統を用いると効率的であることが示された。
|