研究課題/領域番号 |
19530671
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷 利樹 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, 研究員 (60392031)
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研究分担者 |
田中 繁 独立行政法人理化学研究所, 視覚神経回路モデル研究チーム, チームリーダー (70281706)
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キーワード | 大脳皮質視覚野 / 方位マップ / 方位選択性 / 眼優位性 / 視体験 / 形状視制限メガネ / 発達期 / 内因性光計測 |
研究概要 |
本研究提案では発達期の視体験が視覚野の方位マップの構造と機能に及ぼす影響と動物の行動との関係を調べ、物体の認識における大脳皮質視覚野の方位マップの働きを解明することを目的とする。本年度は形状視の制限の程度を変えて育てた各ネコに麻酔下で格子縞刺激を提示し、17野、18野において格子縞刺激に対する皮質の反応性及び方位マップの形成について調べた。形状視を制限するために黒または白のプレートを取り付けたメガネを生後3〜4週のネコに2〜17週間装着し、通常飼育環境下で育てた。これらのネコを麻酔下でメガネをはずし、内因性の光計測を用いて17野、18野から格子縞刺激に対する反応を調べたところ、メガネを2週間装着した時点では格子縞刺激に対する反応は見られたが、特定の方位に対する選択性が乏しく、正常な視覚環境で育った同じ週齢のネコでみられる方位マップの構造は確認されなかった。しかし、同じネコにさらに長期間メガネを装着し飼育したところ、方位選択性は弱いが、方位マップの形成が確認された。この方位マップは水平または垂直の方位に反応する領域が斜めの方位に比べて広い傾向が見られた。また、左右の眼に対する反応はどちらかの眼に対して強くなる傾向が見られた。正常な視覚環境で育った場合、発達の初期では水平または垂直の方位に反応する領域が斜めの方位に比べて広い傾向があるが、生後3ヶ月を超えると斜めの方位に対して反応する領域が水平、垂直の方位と比べて広くなる傾向がある。また、発達期を通して各眼に対する反応の強さに大きな違いはみられない。現在、膜電位感受性色素を用いた光計測を用いて形状視制限メガネを装着して飼育したネコの格子縞刺激に対する反応のタイムコースを確認中である。以上の結果から生後まもない時期の形状視の剥奪は方位選択性及び、眼優位性の発達を妨げ、機能マップの構築に重要な影響を及ぼすことが示唆された。
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