研究概要 |
本研究では,日本語話者における表層失読と音韻失読に注目し,これらの発達性失読症状を検出可能な検査刺激を作成して失読例に実施するとともに,モデル論的見地から我が国における発達性失読の発現機序を検討することを目的とする. 平成19年度は,日本語発話者がどのような過程で漢字の読みを学習しているのかを調査し,どの発達段階でどのような語の読みを学習しているのかを教科書から調べ,各学年に対応する規則語と不規則語の刺激語リストを作成する元となるデータベースを構築した.平成20年度は,上記データベースを用いて日本語話者のための発達性失読用検査刺激セットを作成した.セットは規則語と不規則語それぞれ20語から成り,文字と読みとの規則性が操作されており,セット間における頻度,文字数,モーラ数,文字の学年配当は統制されている.小学5,6年生の健常児228名に本セットを音読させた実施しか結果,各学年とも規則語に比べて不規則語の音読成績が悪くなるという規則性効果が認められた.平成21年度は,上記の結果を踏まえて刺激セットをさらに洗練させ,健常児および発達性失読例に実施すると共に,発達性失読のシミュレーション・モデルを構築し,人間のデータをどこまで再現できるかを検討することにより,発達性失読の発現機序を明らかにする予定である.
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