研究概要 |
本研究では、平成19年度からの特殊教育から特別支援教育への転換に伴い、今後すべての教員が障害児に関する知識、技能が必要となってくるという認識に基づき、特別支援教育を視野に入れた今後の教師教育の在り方について検討することを目的とした。研究は5つから構成された。 研究1では、教員免許状取得希望大学生の入学時における障害児・者についての知識・理解及び意識を明らかにし、それに基づいて、大学でのカリキュラムを系統化することの必要性について検討を加えた。研究2では、教員養成系の大学に対して、教職科目における障害児に関連する科目の設定状況について検討した。その結果、法令上は教職科目の中の「幼児・児童及び生徒の心身の発達に及び学習の過程」の中で、障害児に関する内容を含めなくてはならないにもかかわらず、この要件を満たしていなかったり、授業科目が設定されていても、量的・質的に問題があることが明らかにされた。研究3では、特別支援教育に関する研修を受講した現職教員を対象に、アンケート調査を行い、特別支援教育を視野に入れた現職教育の在り方に検討を加えた。その結果、全体的に特別支援教育に対する課題意識は高く、こうした要望に応えられるような研修形態の在り方を今後検討する必要があることが指摘された。研究4,5では、義務教育段階に比べて特別支援教育の体制整備が遅れているといわれている幼稚園教諭と高等学校教諭に焦点を当てて、彼らの特別支援教育に対する理解や意識を明らかにした。その結果、幼稚園教諭は日々の実践の中で、特別な教育的ニーズがある子どもとの関わりの中で問題意識を持って取り組み、特に具体的な指導法への研修需要が高いことが明らかになった。一方、高等学校教諭の場合は、まだ意識が低い状況であり、特別支援教育全般に関する意識啓発が必要であることが示唆された。 以上を踏まえて、今後、長年の特殊教育時代において蓄積された学校や教員の専門性をいかに特別支援教育体制における教師教育において反映させていくかについて提言した。
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