22年度は、最終年度にあたり、これまでに蒐集された史資料の整理と分析を行い、最終報告書『「身心の健康と教育」に関する基礎的・歴史的研究-「学校衛生」の展開を軸に』(平成23年3月刊行、全87頁)としてまとめた。その主な内容は、以下のようである。 1. ヨーロッパ学校衛生論史の研究 1891年にロンドンで第7回会議が開催された世界衛生会議、1904年にニュールンベルクで第1回会議が開催された学校衛生国際会等、19世紀末から盛んに開催された欧米における衛生関連会議の動向を分析し、「学校」に関わる視点の広がりおよび「心理衛生」分野の導入という特徴を剔出した。つまり、学校教育の「衛生化」特に「精神衛生(mental hygiene)化」の過程をクローズ・アップさせた。この「衛生(hygiene)」概念が身体と精神(心)を包括するプロセスの歴史的特質を解明するため、18世紀以前のヨーロッパにおける身心概念を整理し直して、19世紀に登場する「学校衛生」概念の特色を検討するための視座を提示した。 2. 雑誌「学校衛生」目次の整理とその分析 日本における学校衛生論の展開とその特質を把握するための中心的素材として、大正九(1920)年に結成された「帝国学校衛生会」が翌年から刊行し続けた機関誌『学校衛生』の全目次を提示し、その歴史的特色を示した。日本における「学校衛生」関連諸雑誌の系統的蒐集と分析作業の一成果である。 3. 台湾学校衛生法等の分析 台湾における学校衛生の歴史と現状を分析し、特に2002年2月6日に公布された学校衛生法および施行規則に焦点を絞って、その内容およびその後の展開について分析した。
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