最終年度てある平成21年度は、ジョン・デューイの国際教育文化論に関する研究について二つの観点から取り組んだ。 (1)デューイが提起した1920年代初期における日本におけるリベラリズムの課題と大正自由教育思想の分析に取組んだ。 デューイによる日本の民主主義と教育に関する見解の研究成果は、「デューイの日本又化探究論再考-実験主義義的リベラリズムから見た日本民主主義と文化の課題-」として日本デューイ学会50周年記念論文集『日本のデューイ研究と21世紀の課題』に掲載される。この研究では、デューイが指摘した日本リベラリズムの課題と文化的二重性の問題について、彼の日本文化理解の妥当性とともにその理解の不十分さを指摘した。 大正自由教育思想の研究成果は、「千葉命吉によるデューイ思想の受容と変容」として日本デューイ学会第53回大会で発表し、同学会紀要第51号に投稿した。この研究では、千葉命吉がデューイの問題解決教育を自らの独創教育理論の基礎として受容したにもかかわらず、天皇制に根ざした絶対主義的な価値観からデューイ教育理論を経験主義的な相対主義として批判したことを明らかにした。 (2)デューイが1920年代に訪問したソビエト・ロシア、メキシコ、トルコにおける教育と文化に関する考察を比較分析した。この研究成果は、「デューイの国際教育文化論に関する考察-デューイが見た20世紀初期ソビエトの革命的世界における近代化と教育-」『名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要』と「20世紀初期メキシコ・トルコ・中国における学校教育の役割-デューイが見た革命的世界の学校・教育・文化-」『中等教育研究センター紀要』として出版された。 以上のように、今年度は「協働的実験主義」の観点からデューイ国際教育文化論の現代教育に対する示唆を検討し、実験的知性を社会的文化的状況に活用する「文化的探究教育理論」の究明を今後の研究課題として提唱した。
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