研究概要 |
まず,研究代表者と研究分担者は分担して,臨床心理士の資格は持たないが長年教育現場でカウンセリングを担当している現職教員や,資格を持たないがスクールカウンセラーとして,臨床活動を行っている社会人の方など,本研究に関連する職業の方への個別面接によって,実態把握に努めた。また,臨床心理士の資格は取得したものの,校務分掌ではその資格を生かせないまま,教師として校務についている臨床心理士資格保有者にもインタビューした。その結果,予測したように,前者の資格未取得者では,資格の有無によって,職域が限定されていることに矛盾を感じているが多数語られた。また資格保有者では,教師とカウンセラーという二重のアイデンティティによって,中途半端な気持ちを抱きながら日々活動していることなどが吐露された。彼らの中には心理臨床家としての確かなアイデンティティを確立しないままに臨床心理士資格を取得したものの,結局のところ,その資格は「ペーパー資格」化し,先に獲得していた教師や他の職種の職業アイデンティティのみで職場で活動する場合が現状では,圧倒的に多く見受けられることが予測された。次に学会や研究会を利用して,1種指定大学院担当の大学教員らの聞き取りをおこない,大学側が抱えている問題点についても把握してきた。このような準備段階を経て,インタビューで知己となった現職教員や大学教員の方々と,大学院生,修了生を加えて研究会を立ち上げた。この研究会での話し合いに基づいて,これまでの1種指定大学院の学びの成果と問題点、改善点を具体化してきた。この結果から,より広く現状を把握するための調査研究に着手し,今年度前期の実施を目指している。
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