本研究の目的は、2年間で、住民の主体的な課題化学習の成立条件と当該フィールド「地域」概念(日本的形態)との因果連関構造を解明することである。2年目である平成20年度には、下記の成果が得られた。(研究実施計画の1、2及び3は、平成19年度に実施済み) 平成19年度の理論研究により仮設した「地域」概念の日本的形態のモデルの要件(要素)は、(1)「自然村的秩序」のもつ内発的エネルギーの存在と再生産、(2)「中央」勢力圏に対する経済・政治・文化の自立志向、(3)生活・生産圏の異心円的複合構造-曼荼羅的世界観-(4)個人志向と集団志向との動態性を生み出す緊張力学の備え、の4点である。平成20年度は、下記によりその検証を行った。 4実践分析と仮説の検証2・内発的地域づくり実践の個別具体事例の調査研究(都市住宅地) 大阪府貝塚市(福祉ネットワーク)及び奈良市富雄地区の2フィールドについて調査研究を行い、地域モデルの検証を行った。 5地域概念の農漁村ケースと都市住宅地ケースとの比較検討による共通要素と個別要素の抽出 共通要素:前記のモデル要素(要件)の(3)(4)農漁村ケースでは(1)〜(4)がほぼ検証された。住宅地の個別要素=(1)については高齢者福祉ケア及び児童安全見守りという個別課題に即したネットワークが機能し絆帯が構築されている。この絆帯ネットが内発的エネルギーを生み出す。(2)については、「死者との対話」、「苦い経験との対話」により学習の内発的エネルギーが生み出され、当該地域の「誇り」(=自律性)形成に接続している。 6総括・地域概念の日本的形態と主体的課題化学習の成立との連関構造 5で前記したケースの個別条件を前提して、前記連関構造が一定程度確かめられた。これらは、主体的な課題化学習の分析上、有効性をもつ視点として検討する価値がある。
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