本年度は3ヶ年計画の最終年度にあたり、前年度までに実施した授業研究の総括を、とりわけ学習規律形成の視点から行った。そのさい、いくつかの授業を比較検討することで、教科内容へのアプローチのし方が自主的な学習のスタイルを要請し、それが一定の習慣化していくことで授業規律が形成される回路と、学級づくりで培われた自主共同の学習規律形成が話し合いや討論のある授業の展開とそれを支える教材研究を要請する回路との、二つの回路が実践的な仮説として想定されることが明らかになった。さらに学習集団づくりの組織方法論の一つとして普及している「指導的評価活動」について、授業者が授業のどの場面で使用しているかの分析を行い、授業規律形成のための指導評価表を開発するための条件的な基礎資料を得ることができた。また実施した授業研究の関係者への聞き取り調査を個別に実施することで、授業記録に表れている言動を支えている教師の教育観や授業規律観についての知見を深めることができ、指導評価表を支える教師の理念や構えの重要性を再認識した。また昨年度に調査を行ったドイツ教育学における規律をめぐる言説について、アメリカの規律をめぐる言説と対比することで、わが国の規律指導の言説の動向を国際的な観点から見直すことができ、その点について中国四国教育学会で発表した。最後に3月に全体を振り返る総括的な研究会を開催し、今回達成できなかった「有効性の検証」のための実証的研究にむけての枠組みの検討を行った。
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