ペスタロッチ・フレーベル・ハウスにおけるシュラーダー・ブライマンの教育思想と実践の全容を明らかにし、アメリカにおけるシュラーダー・ブライマンの影響力を探ることが本研究の目的である。今年度は昨年の成果である「ペスタロッチ・フレーベル・ハウスの教育実践と母性」に流れるシュラーダー・ブライマンの教育思想と同時期に生きたドイツ人幼稚園指導者エマ・マーウェデルのそれとをアメリカ人幼稚園教員ウィギンの自伝を中心に比較しながら、その類似点を確認する作業を行った。マーウェデルのドイツ、アメリカでの足跡を辿りながら、ウィギンに伝授しようとした幼稚園教員の専門性としての共感を解明し、恩物作業の機械的な指導に陥りがちであったドイツ人幼稚園指導者とは異なる養成の実態が明確となった。特に、(1)幼稚園教員の専門性育成において、子どもの特性や願望、必然性を観察の中で洞察することや、(2)女生徒が「精神的母性」を持った母親や、当時の女性たちに唯一開放されていた職である教員へと準備される練習の場として幼稚園を捉えていた点に、ハウスの実践との類似点が見られた。 また、ベルリンのペスタロッチ・フレーベル・ハウスの調査によって、1893年のシカゴ博覧会にハウスが展示した資料ならびに、展示の監督に当たるために渡米したシェーペルとシュラーダー・ブライマンとの交換文書を明らかにすることができた。一方、シカゴ博覧会以前にハウスの保育に関心を示したアメリカ人幼稚園運動家ピーボディやマーウェデルとの交流については明らかにすることができなかった。
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