本年度は、「育徳(美徳)同盟」(Tugendbund)に所属した主要人物が織りなす人間関係の力学並びにこの組織の特徴について解明するため、この同盟の結成・運営に中心的な役割を果たしたヘンリエッテ・ヘルツとフンボルトとの関係に焦点を当て、フンボルトからヘンリエッテ・ヘルツに宛てられた書簡等を分析することを通して、両者の交友関係がいかにフンボルトの「教養」理念形成に寄与したのかについて解明した。この研究成果を2009年11月21日開催の中国四国教育学会第60回大会(於:島根大学)にて「フンボルトとヘンリエッテ・ヘルツ」と題して発表するとともに、同名の論文を中国四国教育学会『教育学研究紀要』(CD-ROM版)第55巻に掲載した。 なお本年度は、研究の総括を行った。「育徳(美徳)同盟」がめざした理念と現実について明らかにするとともに、そこでの経験を通してフンボルトが得たものとは何だったのかについて解明した。その結果、フンボルトの「教養」理念の本質要因として、自立した個人と個人の結合という社交性が措定されていることが明らかとなった。人間の出発点としての個性(一面性)が他の個性(一面性)と相互作することある。それは、同盟を通じて知り合い、後にフンボルトの妻となるカロリーネ・フォン・ダッヘレーデンとの友愛・愛についての理論と実践に基づくものであった。そうした研究成果を「ヴィルヘルム・フォン・フンボルトの『教養』理念形成における社交の問題」と題して、教育哲学会第52回大会(於:名古屋大学)にて発表した。
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