本研究は、ドイツにおいて現在行われている教師教育改革と教員評価制度の改善を一体のものとして把握し、その現状および課題を解明するとともに、わが国の改革動向との比較考察を行うものである。本年度は、主に各州での教員評価の実態とその改革動向についての調査分析を行った。その成果の要点は以下の通りである。 1.勤務評定の対象となるのは、「官吏」身分の教員に限られる州(ブランデンブルク)と「官吏」「職員」の双方が対象となる州(ベルリン)が存在する。なお、ドイツ全体で「職員」身分の教員は約30%弱であるが、それらは旧東ドイツ地域の州に集中している。 2.従来、勤務評定は、すべての教員に対して実施されていたが、今日では、(1)採用時ないし試補期間の終了時、(2)昇進・昇格を希望する時、に限定される場合が一般的である。ただし、5年に一度の定期評定を実施している州(ベルリン)も存在する。 3.勤務評定を行う担当官は、従来、視学官であったが、数年前から校長がその任に当たるのが一般的になっている。より実質的な評定を可能にする、というのがその理由である。しかし評価の客観性をどのように担保するか、が重大な問題となっている。すなわち、評価は多くの場合5段階で行われるが、評価結果の大半が、上位の第1ないし第2段階になってしまうのである。 4.評定の結果は、確定前に当該教員に通知される。評定に疑義がある場合には、異議申し立てのための特別な仕組みが作られている。 5.評定の結果、成績が悪い教員を処分することは理論的には可能だが、現実的にはまずあり得ない。また通例、成績がよい教員に対して、特別給が与えられることもない。一般に評価と給与等の連動については、現在までのところ、消極的な姿勢をとる州が多い。
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