本研究は、現在ドイツにおいて進行している教師教育改革と教員評価制度の改善を一体のものとして把握し、その現状および課題を解明しようとしたものである。現地調査は、ベルリン、ブランデンブルク、ニーダーザクセンを中心に行い、その成果の要点は次の通りである。 1.現在、教師教育改革の中心に位置づけられているのは、大学改革とその中での教員養成制度改革である。ドイツ大学は、「ボロニャ宣言」での合意に基づき、2010年をメドにすべての大学・学部で「学士」「修士」の課程が創出されつつあるが、その中で、修士課程の修了をもって「第1次教員試験」の合格に代替するという改革が進行している。ただし、修士修了生が実際に問題なく試補期間に進むことができるかどうかは、もうしばらく経過を見きわめる必要がある。 2.大学制度改革と並行して、教師教育の「スタンダード化」の取り組みが強力に推進されている。常設文部大臣会議は、2004年に教育諸科学、すなわち教職専門科目に関わって大学教育および試補教育それぞれの段階ごとの到達能力(コンピテンシー)の体系の設定に合意したが、さらに2008年には、教科専門科目に関わってのスタンダードを提示している。 3.教員の資質向上策の一環としての勤務評定は、従来、すべての教員に対して定期的に実施されていたが、今日では一般に、(1)採用時ないし試補期間の修了時、(2)昇進・昇格を希望する時、に限定されている。ただし、例えばベルリンなどのように5年に1度の定期評定を継続している州も存在する。 4.評定の結果、成績が悪い教員を処分することは、理論的には可能だが、現実的にはまずあり得ない。また、成績がよい教員に特別給が与えられることもない。評価と給与との連動については、それを促進すべきであるとする提起にもかかわらず、現在までのところ消極的な姿勢を取る州が一般的である。
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