教員給与制度改革の動向はいくつかの国で共通している。すなわち、(1)職務、キャリアに応じた級の新設(2)教員評価と能力主義の導入、これである。本研究では、このような改革の動向を日本、イギリス、スウェーデン、さらに中国も視野に入れて検討した。 その中で上記(1)を典型的に示しているのがイギリスだと言える。同国では、一般教員について、基礎給料表の上に上級給料表を設けているが、さらに卓越技能教員給料表、優秀教員給料表を別途設けている。また、管理機能を担う教員にはリーダーシップ教員給料表がある。要するに、キャリア(能力)に応じて給料表を多元化する方向の改革である。 他方、能力主義に基づいて、個々の教員の給料を個々の教員の評価によって格付けするシステムをとるのがスウェーデンである。この場合、校長が教員との協議によって給料を最終決定する。上記(2)の教員評価と能力主義の導入の一形態だと言える。 日本では、上記(1)については主幹職など新たな級の設置、(2)については教員評価を昇給と結びつける方法をとっている。ちなみに、中国でも形は異なるが同じ傾向が見られる。 教員給与制度の改革を効果的に進めるには第一に、新たな級に対応する職務の内容を明示する必要がある。第二に、教員評価と給料格付けの関連を明示する必要がある。教員給与制度が効果的に機能するには、評価と処遇の関係について説明責任が果たせるシステムづくりが課題である。
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