【研究成果の具体的内容】(1)初年度に収集した資料の内容分析をおこなった。対象とした資料は、アジア歴史資料センター、国会図書館憲政資料室、大韓民国中央図書館、国家記録院、台湾文献館、中央図書館台湾分館の台湾教育令・朝鮮教育令関係文書である。(2)史料の追加収集は、中央図書館台湾分館、関西学院大学学院史編纂室などで行った。関西学院大学では1931年〜53年の文部省と学院との往復文書を閲覧することができた。両教育令の制定に関わった官僚の個人文書としては、阿部洋氏から資料(隈本繁吉日誌)の提供を受けると同時に、研究上の助言をいただいた。(3)教育史学会大会(9月:青山学院大学)、アジア教育学会大会(10月:早稲田大学)や日本植民地教育史研究会大会(3月:龍谷大学)に参加し、廣川淑子さんをはじめとする先行研究者と意見交換を行った。(4)内容分析の結果を年表型のシートに入力する作業を継続して行っている最中である。 【意義・重要性】この作業が完結すれば、台湾教育令と朝鮮教育令の制定過程を時系列でみることができると同時に、横断的にも考察することができる。教育令の制定は朝鮮が先行しているが、制度や組織、教育内容の導入にあたっては両者が前後することもあった。また、両総督府の教育政策の違いや教育令の制定に関わった教育者・官僚たちの認識の相違などが垣間見られる。朝鮮の第3次教育令をも含めた植民地教育令の制定に関する全体像(時系列+横断)を描くことに意義と重要性を見出している。
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