学校選択制度に関する諸研究を概観し、批判的に考察した結果、以下の諸点が明らかになった。すなわち、学校選択制度は多様な制度理念、形態をとるものであり、教育学をどのような性質の社会科学として理解し、教育学理論の本質をどのように把握するかという、深く教育学研究の方法に関わる視点から考察する必要がある。本研究の主題の解明には、「教育学としての教育行政研究」とは何かという問いを抜きにしてはあり得ないのである。つまり、これまでの研究で、従来の主要な争点となった教育制度における市場原理の有効性について、これを社会制度の機能を観察するという立場からアプローチするのか、教育を統治する関係者の行為の意味を拡大するためにいかに活用しうるのかというアプローチするのかという研究方法の相違こそあが重要であることを明きからにした。特に、本研究は、かつて1970年代に社会科学研究方法の教育理論への適用に限界を厳しく批判して教育学独自の理論を構築し、今日にまで大きな影響を与えている「効果ある学校の理論」の意義を再検証してきた。その意義から、今日の日本の教育改革への批判が、市場原理の問題を指摘し、教育学の理論に立ち返るといいながらも、教育を統治する関係者の行為を拡大するのではなく、専門主義の陥没にはまってしまい「教育学としての批判」になりえていないのではないかという課題を検討することになった。
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