(1)精神障害者当事者研究全国交流会参加と関係音への聞き取り 「回復へのためらい」をテーマに、札幌市や浦河町の当事者が自らの障害を積極的にとらえかえそうとしている話は、病んでいる現代社会の中で生きている人間のあり方と関わって示唆的である。分科会では、浦河のべてるの家のメンバー、苫小牧SAの創立者からの報告に加え、精神障害における現実感とは何かの研究、および任意入院の研究など、当事者が自らの障害を研究しそれを受け入れながら、社会的な自立へつなげていこうとする報告がなされ、学習文化という面からもこの当事者研究が重要な問題提起をしていることがうかがえた。 (2)北海道浦河べてるの家の講演会とワークショップへの参加 大阪市内の障害当事者もまじえながらフロアからの質問に答えるという方式で行われ、幻聴を悪いものと思わず、例えば幻聴と挨拶をするなどしながら、仲良くする中でそれとつきあっていく方法が自らの経験として紹介されるなど活発な意見交換が行われた。また、わが子の精神障害に悩む親からは深刻な相談が出されたが、それは病院や家族の枠を越え、地域や社会の様々な支援のネットワークの必要性を提起しており、とりわけコミュニケーションの機会や場をどう作り上げていくかという課題である。 (3)精神障害のある入が働く喫茶コーナーへのアンケート調査の実施 調査では、45カ所から回答を得た。このような喫茶コーナーの取り組みに注目したのは、社会的入院あるいは在宅を余儀なくされている精神障害当事者に就労の機会や職業訓練の機会を提供するだけでなく、直接一般市民であるお客と接し、サービスをするという点で有効な機能を有していると考えられること。また、精神障害当事者の居場所として安心した時間を過ごすことができる空間であること。さらに近隣地域の市民が障害のある人と出会うことで精神障害に対する理解が促進され、それが差別や偏見を是正していく上でも有効であるということ。そしてそれによって地域でのノーマライゼーションを進めていくことが期待されることである。そうした視点から今後詳細な分析を行う予定である。
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