第一に、メタ評価制度の理論的枠組みを検討した。評価結果に対するメタ評価として、(1)評価者内での評価制度の科学的検証とその結果の公表、(2)評価結果に対する被評価者側からの異議申立という形での評価批判の側面、(3)NDPBs(非省庁型公的機関、いわゆるエージェンシー型組織)による評価・政策実践に対する議会による行政監査、(4)研究者による第三者的評価研究、の四類型がイギリス国内で想定され、一部実践されている。 第二に、英国のOFSTED(教育水準局)によって行なわれている学校評価及び教育諸政策の評価システムに対する「メタ評価」システムの実態について、調査検討を行うことを通じて、2005年前後から始まっている民営化(NPM)政策の転換が特に2007年以降、メタ評価の実施運営に大きな影響を及ぼしていることを明らかにした。具体的には、評価制度や教育政策、特に学校評価とキャリア教育をめぐる政策が従来の民間委託(民営化)路線から公的機関による評価・政策の実施(公営化)へと転換する中で、メタ評価が十分機能しなくなりつつある状況が示された。 第三に、第三者的機能を有していたが2005年度改革で廃止された素人視学官(lay inspector)制度の現在までの成果の再検討を行った。その結果従来のシステム内のメタ評価的な機能が期待される本システムが、改革を通じて機能不全に陥っており、特に従来イギリス教育制度内で尊重されてきたlayman controlが評価制度においては実質的に情報公開という形でのみなされる状況になっていることが示された。 第四に、日本の大学評価制度のメタ評価的側面の現状を調査し、それとの関係でイギリス高等教育における研究・教育評価、特に新たな研究評価RAE2008の動向を整理した。
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