本研究は、英国における、(1)初等・中等教育段階の学校に対するOFSTEDによる第三者評価の実施、その結果に対する批判とそれに基づく改革動向を整理し、(2)高等教育機関内外でのメタ評価をめぐる動向について、異議申立制度やキャリア支援機関の第三者評価制度、苦情申立制度を検討する中で、評価の評価、すなわちメタ評価の実現要件を析出し、以上を踏まえ、(3)日本の学校評価制度におけるメタ評価制度の創設の可能性、理論的立脚点の提示を目指した。 その結果、目標(1)については、OFSTEDにおいては当初組織内での評価制度に対する研究の蓄積が行われ、その後2000年代を通じて評価者の研修や学校評価報告書の内容の検証、および2003年以降の制度改革を通じて、間接的にメタ評価が実行されているとみなしうることが示された。目標(2)については、高等教育機関の制度改革全体を通じて、「質保証」(Quality Assurance)制度の導入・徹底が実施され、その一環としてメタ評価の制度化が特に教育機能に関する諸側面で実現されていること、その結果たとえば「キャリア教育制度の実施と自己評価⇒その外部評価⇒そのメタ評価」というシステムの萌芽が一部領域で見られることが明らかとなった。なお目標(3)については、文部科学省による学校評価ガイドラインの公表を契機に、自己評価を中核として、その「評価を評価」するものとして学校関係者評価や第三者評価を位置づけうること、具体的には埼玉県立学校における学校評価システムが学校経営評価シートの作成を通じた学校自己評価を学校評議会を基盤とした徒参加型の学校関係者評価と評価委員の訪問による第三者評価を軸とした学校運営が実現しており、一定のメタ評価が実現していることが明らかとなった。
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