本研究では、幼稚園の二つのクラス(3歳児段階では1クラス)について、週に1回ないし2回、3歳から5歳までの3年間の縦断的な観察を行い、その記録を分析することを中心として、また各々の分担者がそのフィールドで行った観察を元に検討している。本年度は観察の補足を進めることと共に、3年間の記録を全体として見直した。幼児教育を貫く3つの軸として「協同的な学び」や自己制御・学習の芽生えを取り上げ、最終的に、それらの中核にある基礎的な過程として「目的を志向する傾向」の成立として位置づけた。 そこから次のことを見いだした。子どもは3歳から様々な活動を通して少しずつ目的を意識して行動するようになっていく。構成遊び(積み木遊び等)、ごっこ遊び、製作活動、クラスのグループの話し合い活動などを観察した。そこから、計画を立てること、役割分担、目標志向、意志決定などの働きが実際のものを操作し、子ども同士が刺激し合い、また保育者が助言や手伝いをする中で、実際の活動展開の中で生成されていく。さらに、それらの集約的な活動として、年長児の秋において、「協同的な学び」の活動が行われたところを克明に分析した。そこでは例えば、お化け屋敷を作り、園の「祭り」で発表する活動がなされていた。そこでは、大きな目的として保育者による祭りということへの提示はあったものの、何をどう作るかは子どもたちの話し合いに委ねられ、子どもが分担をしつつ、各グループで果たすべき役割やそこでの作業を具体化し、またその具体化されたものを伝え合うところで、全体の方向性が定まってくるダイナミックな関係が観察された。 この目的志向性を中心として、学びの芽生えが小学校に向けての基礎となすのだと考察した。
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