2008年度は当初、以下の四つの研究実施計画を立てていたが、全て課題を達成することができた。 (1)メンタリング・プログラムならびにメンタリングに関する文献資料収集と分析:継続して行っている。特に今年度は矯正図書館でいくつかの未発表資料が見つかり、まだ研究発表や論文までには至っていないが、新たな展開が期待される。 (2)第2回国際コミュニティ心理学会(II International Conference on Community Psychology)で、国際的比較の視点から日本でのメンタリング・プログラムの導入経緯の類型化を試みた。モデル移行論の可能性を検討しているが、これは今後の課題となっている。 (3)『メンタリング・プログラム:地域・企業・学校の連携した次世代育成』(川島書店)から出版した。コラムを入れたために予想以上に時間がかかったが、日本で初めての青少年向けメンタリング・プログラムに関する著作と世に送り出すことができ、ほっとしている。校正中に、世界同時不況、米国のオバマ大統領の就任等、後世になってメンタリング運動の画期と称されるであろう時代の変化があり、これらを踏まえた新たなメンタリング運動の動向を多面的に分析する必要が生じている。 (4)学校型メンタリング・プログラムの調査(ロンドン)については、2008年8月に実施することができた。この調査結果の総括を同年11月の日本生涯教育学会第29回大会にて行ない、学校とメンタリング運動の関連に関する重要な成果を得ることができた。英国では企業が社会貢献活動として、従業員を学校型メンタリング・プログラムに派遣しており、着実な成果を上げつつあることが判明している。 これらを含め、2008年度は、理工系人材養成、障害者支援、等にも成果を上げることができ、メンタリング研究の領域が拡大した。その分、新たな究明すべき課題が判明してきている。今後に期したい。
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