平成20年度は、まず、年度の前半では、平成19年度に実施した中核市教育委員会対象調査(「教員の自主的主体的研修の奨励・支援についての調査」)結果の継続分析を実施した。そして、年度の後半には、二つの新たな調査を実施した。第一に、調査者が提起している「一定勤務年数での長期研修機会付与制度」創設に関して、主要な受け入れ機関と想定される大学・大学院関係者に対する調査であり、第二に、研修の主体である現職教員に対する調査である。前者については、日本教育大学協会評議員160名と全国私立大学教職課程研究連絡協議会役員(2007年度)50名に調査用紙を送付し、113名から回答を得た(教大協92名、全私教協19名、不明2名。回収率53.8%)。なお、回答者には調査集計結果を送付・報告した。制度創設については、「よい」88%、「よくない」6%、であり、高い支持のあることが判明した。後者については政令指定都市(17市)・中核市(39市)立の学校園(幼稚園、小学校、中学校..高校、特別支援学校)を各1校園抽出し、研究・研修責任者の教員271名に調査用紙を送付した(校園長経由。小学校は一校につき2名回答依頼)。回答は91名であり(回収率33.6%)、「よい」83%、「よくない」11%、であった。しかし、大学教員対象調査と比較すると、現実の過酷な勤務実態から制度の実現可能性が考えられないという意見や長期研修の有用性についての懐疑がやや目立った。しかし、平成18年度実施(立命館大学学術研究助成)の都道府県・政令指定都市教育委員会対象調査(「よい」38%、「よくない」36%)や平成19年度実施の中核市教育委員会対象調査(「よい」46%、「よくない」35%)と比べると大学教員、現職教員とも高い支持であり、大学教員や現職教員の中で、教員の力量形成上、「一定勤務年数での長期研修機会付与制度」に対する強い期待が潜在的に存在すると言える。このこつの調査及び都道府県・政令市・中核市教育委員会対象調査から、長期研修が児童生徒の学習権保障の観点からどんな有用性を持っているのか明らかにすること、現行制度のどこに問題があるのかについて明確な主張をおこなうことが重要な課題であることが判明した(調査の趣旨には記載しているが、理解を得るには不十分である)。また、大学教員対象調査からは、長期研修支援委員会(仮称)の構成や機能、受け入れ態勢の整備についての貴重な指摘が得られた。財政的課題については、文部科学省も主張している公財政教育支出の抜本的拡大(たとえばOECD諸国平均のGDP比5%)と現行の法定・行政研修の大幅な整理(教員免許更新制の見直しも含めて)を提言する意見が特徴的であった。
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