本年度は、データベースを作成するとともに、日本留学帰国者の中国近代化過程における特色を大まかに描くことを目指す一方で、資料調査を通じて帰国後に教育界で顕著な活動をした日本留学帰国者を発掘することを目的とした。 平成20年9月6日から12日まで実施された資料調査では、上海図書館と浙江図書館古籍部を訪れ、前者では『留日帝国大学高等学校同窓録』を、後者では『中華留日同学会同学録』や『浙江留日学生同郷録』など、日本留学帰国者の学歴を知ることができる資料を手に入れることができた。これらの資料は、各種の人名辞典に見られる日本留学帰国者に関する内容を補完するものと思われる。 また、特に山東省の日本留学帰国者の活動に着目することで、近代中国における日本留学帰国者による活動を試論的に考察した。彼らの活動は教育活動にも及んでいたのか。さらには具体的にはどの分野で活躍することが多かったのか。こうした課題をもって取り組んだ。 その結果、試論的な考察ではあったが、教育分野において活躍していた者も多かったということがわかった。しかも、その活躍は、高等教育、中等教育、初等教育、社会教育、教育行政など多くの面で見られることであった。 特に、清末から民初にかけてあまり普及していなかったと見られる初等・中等教育の普及が彼らの活動により少しずつ成し遂げられていったと見られる様相も垣間見ることができた。この点は、注目されるべきことと思われる。
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