本研究は、アメリカ合衆国の多文化教育の理論と実践を手がかりに、我が国で実施されている「総合的な学習の時間」のカリキュラムを革新するためのモデルを解明することを目的としている。 具体的には、アメリカにおける多文化教育の理論や実践の現状を捉えるとともに、それらの蓄積された知見をもとに、教育の目標・内容・方法・評価の視点から多文化教育のカリキュラムモデルを解明することを通して、総合的な学習のカリキュラムを発展させるための示唆を得たい。本年度は、以下のような調査研究を実施した。 1.第1回海外調査 アメリカ合衆国ウィスコンシン州マディソンにおいて海外調査を実施し、多文化教育についての文献の収集、専門家へのインタビュー(ウィスコンシン大学教授グローリア・ラドソン=ビリングズ、カール・グラント他)、先進的な取り組みをもつ学校の訪問聞き取り調査を行った。 2.文献研究 文献研究については、多文化教育のカリキュラムに関して、教育目標、教育内容、教育方法、教育評価の項目ごとに文献リストを作成して先行研究のレビューを行い、多文化教育のカリキュラムモデルを解明するための計画を立てた。総合的な学習の時間に関しても、文献リストを作成し平行して文献研究を進めた。 1年次の調査研究からは、NCLB法(落ちこぼれを作らないための初等中等教育法)の影響のもとで、多文化教育のプローグラムは停滞傾向にあることが示唆された。また、これまでの筆者による研究成果を整理して、多文化教育の新しい動向を明らかにすることができた。
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