平成19年度は以下の3点について調査研究を実施した。第1は、アメリカ、特にカリフォルニア州における移民に対する教育政策等の流れを把握し、日本の子どもたちのアメリカにおける位置を明らかにすることである。「イングリッシュ・オンリー」(英語のみの習得を課す)の動きや、「落ちこぼれをなくす」といった近年の政策は、日本からの子どもたちの教育にインパクトを与えている。特に、標準テストによって教育の「成果」が評価されるようになり、日本の子どもたちにとり英語習得への圧力が強まっており、これが補習授業校離れの一因になっている。第2は、ロサンゼルスの日本の子どもの教育の実態を把握するために、日本商工会議所、エスニックメディア、補習授業校関連刊行物、その他各種出版物の収集・分析を行った。日本の子どもの多様化が進み、補習授業校でも永住者や長期滞在者の子どもが増加し、教育要求の多様化が進行していることが明らかになった。第3は、現地校に就学している日本の子どもたちとその親(総計6組で、いずれも帰国を前提にしている)を対象に聴き取り調査を実施した。子どもたちは、現地校に適応し、英語が優越し、アメリカでの進学を希望するようになっている。親は、英語の習得と同時に、日本語の習得や日本について学習させたいという期待を強くもっているが、子どもは小学校高学年になると、現地校の学習や対人関係を重視するようになり、中学生段階では、より一層「現地化」が進む。いわば、「移民2世」といった特徴を持つようになってくることが明らかになった。
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