平成20年度は次の3点について調査を行った。第1は、ロサンゼルス補習授業校(あさひ学園)の卒業生、特に、親に伴われ小・中学生時代に渡米し、補習授業校の高等部(日本の高校段階)を卒業し、現在もアメリカに在住している大学生3名(20歳〜21歳)と社会人2名(30歳代と40歳代)を対象にしたインタビュー調査である。その結果、現地校と補習授業校の両方に就学したことで、エスニック・アイデンティティが常に揺れ動いてきたこと、また、英語力も日本語力も十分でないことから「インパーフェクトな存在」として自分をとらえてきたことなどが明らかになった。固定的なエスニシティを持つのではなく、いわば「境界」を生きており、その「境界」を時々の状況に応じて自ら設定し直し、さらに、「移民1.5世」として日本でも、アメリカでもない独自の「日系文化」を内在化している。 第2は、補習授業校の教師と日本から進出している塾の教師を対象にインタビュー調査を行った。教師調査で注目すべき点は、教師自身が永住者が多いため独自の「日本」のイメージをつくっているため、生徒にも独自の「日系文化」が伝わっていることである。第3は、ロサンゼルスにある韓国の補習授業校に関する資料収集と担当者への聞き取りを行った。その結果、韓国では永住希望者が多いこと、英語力の習得を重視していること、さらに「韓国系文化」ではなく「韓国文化」の継承を重視していることが明らかになった。韓国系の補習授業校は母国とのつながりを保持するという機能を果たしている。
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